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? 確率共鳴作用
平衡から遠く離れた非線形系が示すもう一つ奇妙な現象は、乱れた状態に特定のノイズを与えると自己組織化による空間構造ができあがる現象である。これは確率的な系に作用する共鳴効果という意味で確率共鳴と呼ばれている。
簡単な数値実験でこのことが証明されている。図4−33に示すような格子上にバネでつながった重りがあり、それぞれの重りはランダムに振動する。この重りの集合体に同時に外部からノイズを作用させると振動が協調的に生じる。同じ振幅を持つ重りを等高線のようにつないだ図を書くと、明らかに空間的に組織化したパターンが現われた。このような現象が現実の世界でどう働いているのか、今研究が進められている(Braiman,1995)。

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図4−33 ノイズによるパターン形成原理、確率共鳴作用(Bra。man,1995)

(3) 生体構造に学ぶ材料設計
生体は人工材料と比べて、部品材料としての性能や信頼性は低い。しかし構造システムとしてみると、環境に対してかなり最適に設計された多機能な構造体であり、その性能や信頼性は高い。これは生体が、構成材料−構造要素−構造システムといった階層的な複合材料の構造体だからである。以下に生体の最適構造や機能をまねた人工材料や構造体の設計概念について考えてみる。
近年まで、材料はなるべく均質であることが、強度的、化学的などの機能面から、好ましいとされてきた。しかし、生体材料や構造をみると、材料の組成や組織が均質化から、ある程度離れている材料が利用されていることがある。その例として、傾斜機能材料(貝殼などからの発想)、不均質化複合材料(木、竹、象牙からの発想)、非対称積層材(木、骨からの発想)を挙げることができる(岡本,1995)。不均質化複合材料の例としては、図4−34に示すように、半径方

 

 

 

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